あー。またも湯舟で寝てしまった。これから仕事なのに、風呂上がり、間違えて想像上の動物の絵柄が付いた缶を開けてしまった。こういう時は寝るに限る。だが、このまま寝ても、こびりついたストレスは取れない。寝る前に、遠い遠い地球のどこかにある場所のことを考えてみようと思う。たとえばモンゴルのこととか。近い?
昨年クリスマスに銀座のシャンテ・シネにモンゴル映画を見に行った。「天空の草原のナンサ」という映画。監督は34才のモンゴル出身の女性監督。「らくだの涙」の監督だ。「らくだの涙」は見ていないのだが、一時期デスクトップにこの映画のらくだの写真を敷き、仕事中にほげーっと眺めていたことがある。見なきゃ。忘れてた。
映画の舞台はモンゴルの草原。6歳になるナンサちゃんを軸にして、その若い遊牧民の一家の暮らしを描いている。ナンサちゃんはある日、お手伝いで山に出かけた時、洞窟で一匹のかわいい犬を見つけて帰ってくる。お父さんは「オオカミの仲間かもしれないからダメだ」と、飼うことを許さない。でも、お父さんは羊を売りに町へ出たのをいいことに、ナンサちゃんはこっそり飼い続ける。そして、ある日、放牧の最中に犬とはぐれてしまう。馬に乗り、一生懸命に犬を探すナンサちゃん。ようやく見つけた時にはあたりが暗くなり、雨が降り出した。心細くなったナンサちゃん。しかし、遠くからモンゴルの歌声が聴こえてくる。歌声の聴こえる方に進むとゲルがあり、年老いたおばあさんが家の中へ迎えてくれた。濡れた体や衣服を乾かし、雨の止むのを待っている間に、おばあさんは「黄色い犬にならなくてよかったね」と、モンゴルに伝わる黄色い犬の伝説を話し聞かせてくれるのだ。
やがて季節が変わり始め、遊牧民のナンサちゃん一家にとっては次の場所へ移動する時期が来た。ゲルが畳まれ、家財一式がコンパクトにまとめられる。ナンサちゃん一家のゲルが立っていた場所には何もなくなり、ただ杭にあの犬が結わえ付けられているだけだ。置き去りにされる犬を想うナンサちゃん。小さな弟の面倒を見るように言われていたはずなのに、犬に気持ちがいっていて、出発してから弟がいないことにお母さんが気付いた。慌てて馬を走らせ、来た道を戻るお父さん。その頃、小さな弟はヨチヨチ歩きでケラケラと笑いながら、羊の死骸に群がるハゲタカに近寄っていっていたのだ。…どこまで書いていいんだ?…どうなる?小さな弟!
さて、麒麟も尽きた。
このようにストーリーはいたってシンプル。しかし、モンゴルの遊牧民の普通の暮らしが描かれているのが魅力的だ。チーズが作られる様子。遊牧の風景。牛糞で肉をいぶすお母さんの横で、牛糞で遊ぶ子供たち。お父さん、お母さん、ナンサちゃん、妹、弟はいつも民族衣裳を着ている。カラフルで素朴な家具。長女のナンサちゃんは一人前に馬に乗り、遊牧のお手伝いをする。お母さんの料理のお手伝いもするし、弟や妹の面倒もよくみる。その一方で町で買ってきたどぎつい色のプラスチック製品もちらほら見られ、野生のオオカミに悩む遊牧民の会話も聞ける。ほとんど誰もいないような草原の中を、スピーカーで選挙を知らせる中国政府の広報カーが走る。ナンサのお父さんは政治に無関心だ。
映画の中の一家は実在の遊牧民の一家で、おそらく平均的な遊牧民の若いファミリーなのではないかと思う。このナンサちゃん、妹、弟という3人の子供たちの邪気のない笑顔と子供らしい振る舞い、一挙手一投足がまた愛らしい。そして、ナンサちゃんのお姉さんぶりが、お姉さんだった自分を思い出して懐かしい気分になるのだ。とってもしっかりしてるのに、犬を飼いたいと思ったらその信念を曲げない様子、犬を追い掛けてそれ以外のことは頭からスコンと抜けてしまう様子、なんだか自分を見ているようだ…。
見た後に友人と「よかったねー」と言い合いながら外に出たのだが、こうやって書くとよかった要素が多過ぎて、何を書いてるのかわからなくなってきた。こりゃ見るのが一番だ。モンゴルに興味のある人なら、楽しめる映画です。ホントはおばあさんの話してくれる黄色い犬の話も物語の重要なポイントなんだけど、もう眠いので寝ちゃう!明日の晩に紹介する。あ、仕事しなきゃ。いいや、それも明日。おやすみなさいー。なんだか、いい夢見れそうだ。
★お知らせ★
同じ頃に「天空の草原のナンサ」のことを書いていた赤枕十庵さんのブログ。赤いほっぺのナンサちゃんのイラストがかわいい〜。赤枕さんのイラストのタッチがナンサちゃんにすごくあってる!